- 監修
- 北岡 裕章 先生
(高知大学医学部老年病・循環器内科学 教授)
心アミロイドーシスの診断 核医学検査
心アミロイドーシスの診断において核医学検査は重要な役割を担います。とくに骨シンチグラフィである99mTc ピロリン酸シンチグラフィ(注)はATTR心アミロイドーシスに対する高い診断能を有しており、非侵襲的な病型診断に利用されます。心筋交感神経イメージングである123I-metaiodobenzylguanidine(123I-MIBG)は、心アミロイドーシスにおける除神経の検出や心不全の病態評価に有用です。また、近年ではアミロイド特異性トレーサーを使用したアミロイドpositron emission tomography(PET)も前臨床段階の研究が行われています。
心アミロイドーシスの核医学検査所見は、以下の通りです。
心アミロイドーシスの核医学検査所見
撮影 | 意義と所見 | 備考 |
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ピロリン酸シンチグラフィ | 意義:ATTR心アミロイドーシスの診断
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123I-MIBGシンチグラフィ | 意義:心筋交感神経機能の評価
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アミロイドPET | 意義:心筋アミロイド沈着の評価
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99mTc ピロリン酸シンチグラフィ(骨シンチグラフィ)
近年、99mTc ピロリン酸を使用した骨シンチグラフィがATTR心アミロイドーシス(ATTRvとATTRwt)の検出にきわめて有効であることが見出され、注目を集めています1,2,3。
99mTc ピロリン酸シンチグラフィを用いたATTR心アミロイドーシスの診断能は感度58~99%、特異度79~100%とされ1,2、偽陽性の多くはALアミロイドーシスです。ALアミロイドーシスを除外した場合、診断特異度と陽性的中率は100%と報告されています1。
99mTc ピロリン酸シンチグラフィの評価法には、正面プラナー画像を用いた視覚的評価法および定量的評価法があります4。
99mTc ピロリン酸の心筋集積の程度と予後との関連も明らかとなっており、H/CL比>1.6は独立した予後不良因子とされます2。ATTR心アミロイドーシスにおけるピロリン酸を含む骨トレーサーの集積機序は現時点では不明ですが、カルシウム介在性のメカニズムが推察されています。
99mTc ピロリン酸シンチグラフィによる
ATTR 心アミロイドーシスの評価法
視覚的評価法 |
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Grade 0 心臓への集積なし Grade 1 肋骨よりも弱い心臓への軽度集積 Grade 2 肋骨と同等の心臓への中等度集積 Grade 3 肋骨よりも強い心臓への高度集積 Grade 2とGrade 3を陽性と判定する |
定量評価法 |
H/CL比>1.5(1時間後撮影) H/CL比>1.3(3時間後撮影)
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(Dorbala S, et al. 20194を参考に作表)
心アミロイドーシスにおける核医学検査の推奨とエビデンスレベルは、以下の通りです。
心アミロイドーシスにおける核医学検査の推奨とエビデンスレベル
推奨 クラス |
エビデンス レベル |
Minds 推奨 グレード |
Minds エビデンス 分類 |
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ピロリン酸シンチグラフィによるATTR心アミロイドーシスの診断 | I | C | A | IVb | |
123I-MIBG シンチグラフィによる心筋交感神経機能の評価 | IIa | C | B | IVb | |
アミロイドPET による心アミロイドーシスの診断 | IIb | C | C1 | V |
引用文献
- Gillmore JD, Maurer MS, Falk RH, et al. Circulation. 2016;133(24):2404-2412.
- Castano A, Haq M, Narotsky DL, et al. JAMA Cardiol. 2016;1(8):880-889.
- Ruberg FL, Miller EJ. Circ Cardiovasc Imaging. 2013;6(2):162-164.
- Dorbala S, Ando Y, Bokhari S, et al. J Nucl Cardiol. 2019;26(6):2065-2123.