監修
北岡 裕章 先生

(高知大学医学部老年病・循環器内科学 教授)

心アミロイドーシスの診断 核医学検査

心アミロイドーシスの診断において核医学検査は重要な役割を担います。とくに骨シンチグラフィである99mTc ピロリン酸シンチグラフィ(注)はATTR心アミロイドーシスに対する高い診断能を有しており、非侵襲的な病型診断に利用されます。心筋交感神経イメージングである123I-metaiodobenzylguanidine(123I-MIBG)は、心アミロイドーシスにおける除神経の検出や心不全の病態評価に有用です。また、近年ではアミロイド特異性トレーサーを使用したアミロイドpositron emission tomography(PET)も前臨床段階の研究が行われています。

心アミロイドーシスの核医学検査所見は、以下の通りです。

心アミロイドーシスの核医学検査所見

撮影 意義と所見 備考
ピロリン酸シンチグラフィ 意義:ATTR心アミロイドーシスの診断
  • 視覚的評価法のGrade 2もしくはGrade 3(3時間後撮影)
  • H/CL比>1.5(1時間後撮影)
  • H/CL比>1.3(3時間後撮影)
  • AL心アミロイドーシスでもGrade 2となることがある
  • 血液プールへの生理的集積による偽陽性に注意
  • SPECT撮影の追加が有用
  • 予後の評価に有用
123I-MIBGシンチグラフィ 意義:心筋交感神経機能の評価
  • H/M比<1.6(後期像)は予後不良因子
  • 予後やリスクの評価に有用
  • 疾患特異性は低い
アミロイドPET 意義:心筋アミロイド沈着の評価
  • 心筋への有意な集積
  • 前臨床段階
  • アミロイド特異性トレーサーを使用
  • 心臓外の部位へのアミロイド沈着も評価可能
(注) 99mTc ピロリン酸シンチグラフィは、心アミロイドーシスの診断用途では適応外使用になりますが、保険診療として取扱われることが示されました(保医発1026 第1号、2020年10月26日)。

99mTc ピロリン酸シンチグラフィ(骨シンチグラフィ)

近年、99mTc ピロリン酸を使用した骨シンチグラフィがATTR心アミロイドーシス(ATTRvとATTRwt)の検出にきわめて有効であることが見出され、注目を集めています1,2,3

99mTc ピロリン酸シンチグラフィを用いたATTR心アミロイドーシスの診断能は感度58~99%、特異度79~100%とされ1,2、偽陽性の多くはALアミロイドーシスです。ALアミロイドーシスを除外した場合、診断特異度と陽性的中率は100%と報告されています1

心アミロイドーシスの99mTc ピロリン酸シンチグラフィ

心アミロイドーシスの99mTc ピロリン酸シンチグラフィ

ATTRアミロイドーシスで心筋に有意な集積を認める。

99mTc ピロリン酸シンチグラフィの評価法には、正面プラナー画像を用いた視覚的評価法および定量的評価法があります4

99mTc ピロリン酸の心筋集積の程度と予後との関連も明らかとなっており、H/CL比>1.6は独立した予後不良因子とされます2。ATTR心アミロイドーシスにおけるピロリン酸を含む骨トレーサーの集積機序は現時点では不明ですが、カルシウム介在性のメカニズムが推察されています。

99mTc ピロリン酸シンチグラフィによる
ATTR 心アミロイドーシスの評価法

視覚的評価法

Grade 0 心臓への集積なし

Grade 1 肋骨よりも弱い心臓への軽度集積

Grade 2 肋骨と同等の心臓への中等度集積

Grade 3 肋骨よりも強い心臓への高度集積

Grade 2とGrade 3を陽性と判定する
(視覚的評価は3時間後撮影画像で実施する)

定量評価法

H/CL比>1.5(1時間後撮影)

H/CL比>1.3(3時間後撮影)

H/CL: heart-to-contralateral
正面プラナー画像において心臓に相当する部位へ関心領域(region of interes: ROI)を置き、 対側の胸部(下肺野領域)にも同じサイズのROIを置き、H/CL比を算出する

(Dorbala S, et al. 20194を参考に作表)

99mTc ピロリン酸シンチグラフィ(3 時間後撮影):
視覚的評価法と定量的評価法

99mTc ピロリン酸シンチグラフィ(3 時間後撮影):視覚的評価法と定量的評価法

心アミロイドーシスにおける核医学検査の推奨とエビデンスレベルは、以下の通りです。

心アミロイドーシスにおける核医学検査の推奨とエビデンスレベル

  推奨
クラス
エビデンス
レベル
  Minds
推奨
グレード
Minds
エビデンス
分類
ピロリン酸シンチグラフィによるATTR心アミロイドーシスの診断 I C   A IVb
123I-MIBG シンチグラフィによる心筋交感神経機能の評価 IIa C   B IVb
アミロイドPET による心アミロイドーシスの診断 IIb C   C1 V
* 本ガイドライン策定時点では、心アミロイドーシスに対して99mTc ピロリン酸シンチグラフィは保険診療として認められていない。
(注) 99mTc ピロリン酸シンチグラフィは、心アミロイドーシスの診断用途では適応外使用になりますが、保険診療として取扱われることが示されました(保医発1026 第1号、2020年10月26日)。

引用文献

  1. Gillmore JD, Maurer MS, Falk RH, et al. Circulation. 2016;133(24):2404-2412.
  2. Castano A, Haq M, Narotsky DL, et al. JAMA Cardiol. 2016;1(8):880-889.
  3. Ruberg FL, Miller EJ. Circ Cardiovasc Imaging. 2013;6(2):162-164.
  4. Dorbala S, Ando Y, Bokhari S, et al. J Nucl Cardiol. 2019;26(6):2065-2123.