監修
北岡 裕章 先生

(高知大学医学部老年病・循環器内科学 教授)

心アミロイドーシスの診断 心臓MRI・CT検査

心臓MRI(CMR)

心臓MRI(CMR)は心アミロイドーシスに対して高い診断能を有しています。CMRで進行期の心アミロイドーシスを診断することは容易ですが、早期病変の診断や病型診断には限界があります。また、非典型的な所見を呈することも多いため、他の検査所見や臨床所見を加味して評価することが重要です。

CMRは心アミロイドーシスと臨床像が類似する他疾患(肥大型心筋症やAnderson-Fabry病など)の鑑別にも有用です。Cine MRIと遅延造影MRI(late gadolinium enhancement: LGE)を用いた診断が一般的ですが、近年、心筋T1 mappingによる定量的な心筋組織性状評価の有用性が示されており、心アミロイドーシスの診断に推奨されています。

Cine MRI

Cine MRIは心臓の形態と機能を評価する基本シークエンスの1つです。心アミロイドーシスは心基部優位の心肥大をきたすことが多くなります。従来、対称性・全周性肥大が典型とされてきましたが、近年の報告では非対称性心肥大、とくに非対称性中隔肥大を呈することも少なくないとされています1

遅延造影MRI

遅延造影MRIは心アミロイドーシスにおいてもっとも確立した診断法の1つです。遅延造影MRIは、ガドリニウム造影剤投与後10分以降に撮影し、心筋ダメージ(おもに線維化)を可視化する撮影法です。

心アミロイドーシスの典型的な遅延造影(LGE)所見は、①左室内膜下優位のびまん性LGE、②右室壁や左房壁、心房中隔のLGE、③血液プールの低信号化(dark blood pool)があげられます2

心アミロイドーシスの遅延造影MRI

心アミロイドーシスの遅延造影MRI

典型的所見として、①左室内膜下優位のびまん性LGE、②右室壁や左房壁、心房中隔のLGE、③血液プールの低信号化(dark blood pool)がみられる。

T1 mapping

T1 mappingは心筋のT1値(T1緩和時間[ms])を定量的に測定する撮影法です。T1 mappingは、心筋ダメージを定量的に評価できるため、早期病変の検出や重症度・予後の評価、治療効果判定などへの応用が期待されています。T1 mappingには、造影剤を使用しないNative T1と、造影剤を使用して評価する細胞外容積分画(ECV)の2つの指標があります。

心アミロイドーシスではNative T1、ECVとも極端な異常高値を示すことが多くなります3

心アミロイドーシスのT1 mapping

心アミロイドーシスのT1 mapping

心アミロイドーシスは高血圧性心臓病と比べてNative T1、ECV(extracellular volume fraction)ともに異常な高値を示す。

心アミロイドーシスのCMR所見、推奨とエビデンスレベルは、以下の通りです。

心アミロイドーシスの心臓MRI(CMR)所見

撮影 意義と所見 備考
Cine MRI 意義:心臓の形態および機能の評価
  • 心基部優位の心肥大
  • 対称性もしくは非対称性の心肥大
  • 右室壁や心房中隔の肥厚(≧6 mm)
  • 左室駆出率は保たれることが多い
  • 肥大型心筋症との鑑別に注意が必要
  • Cine MRI単独での診断は困難
遅延造影MRI 意義:アミロイド沈着と心筋線維化の評価
  • 左室内膜下優位のびまん性LGE
  • 進行すると貫壁性のLGE
  • 右室壁や左房壁、心房中隔にもLGE
  • 血液プールの低信号化(dark blood pool)
  • 非典型的LGEも少なくない
  • LGE所見は病期とともに変化
  • Inversion Timeの設定を誤りやすい
  • PSIRシークエンスが推奨
  • 予後と相関
T1 mapping 意義:アミロイド沈着と心筋ダメージの評価
  • Native T1、ECVともに異常高値
  • ECV≧40%
  • 定量的な評価が可能
  • Native T1は基準値の設定が必要
  • 計測は基部もしくは中間部レベルの左室短軸像の心室中隔で実施
  • 病型診断は困難
  • 重症度や予後と相関
  • 経過のモニター、治療効果判定への活用
T2 mapping 意義:心筋浮腫、炎症の評価
  • 健常コントロールと比べ高値を示す
  • とくにALアミロイドーシスで高い値を示す
  • 病型診断に寄与する可能性
  • エビデンスが十分でない
心筋ストレイン 意義:心筋の伸縮を評価
  • longitudinalストレイン、circumferentialストレインの異常
  • ストレインピーク値(絶対値)の低下
  • ストレインピーク時間のばらつき
  • 疾患特異性は低い
  • 病勢モニターに活用
  • 重症度や予後と相関

LGE: late gadolinium enhancementPSIR: phase-sensitive inversion recoveryECV: extracellular volume fraction

心アミロイドーシスにおける心臓MRI(CMR)の推奨とエビデンスレベル

  推奨
クラス
エビデンス
レベル
  Minds
推奨
グレード
Minds
エビデンス
分類
Cine MRI による心形態および心機能の評価 I C   A IVb
遅延造影MRI による他の心筋症との鑑別 I C   A IVb
T1 mapping による他の心筋症との鑑別 I C   A IVb
T2 mapping による他の心筋症との鑑別 IIa C   B IVb
心筋ストレインMRI による他の心筋症との鑑別 IIa C   B IVb

心臓CT

CMRの代替手段として、心臓CTによる遅延造影やECVの評価が可能となっています。低管電圧撮影やデュアルエナジーCTの仮想単色X線画像を用いることで、MRIと同等の遅延造影評価が可能となります4。また、心筋の造影効果やヨード密度からECVも算出できます4,5

遅延造影CT

心アミロイドーシスの診断において、遅延造影CTでMRIと同等の所見を得られる可能性はありますが6、現時点ではエビデンスは不十分です。

CT-ECV

遅延造影CTにおける心筋の造影効果やヨード密度値からECVを算出でき、CMRのT1 mappingによるECVと同等の評価が可能です4。MRIと同様、心アミロイドーシスのCT-ECVは有意な高値を示し、診断に有用です6,7,8

心アミロイドーシスの心臓CT所見、推奨とエビデンスレベルは、以下の通りです。

心アミロイドーシスの心臓CT所見

撮影 意義と所見 備考
遅延造影CT 意義:心筋線維化の評価
  • 左室内膜下優位のびまん性遅延造影
  • 進行すると貫壁性の遅延造影
  • 3次元的な評価が可能
  • 透析患者でもヨード造影剤は使用可能
  • MRIと比べてコントラストが劣る
CT-ECV 意義:アミロイド沈着と心筋ダメージの評価
  • ECVが異常高値
  • シングルエナジーCTでは差分法で算出
  • デュアルエナジーCTではヨード法でも算出可能

ECV: extracellular volume fraction

心アミロイドーシスにおける心臓CTの推奨とエビデンスレベル

  推奨
クラス
エビデンス
レベル
  Minds
推奨
グレード
Minds
エビデンス
分類
心臓MRI(CMR)の代替手段として心臓CT による遅延造影やECV の評価 IIa C   B IVb

引用文献

  1. Martinez-Naharro A, Treibel TA, Abdel-Gadir A, et al. J Am Coll Cardiol. 2017;70(4):466-477.
  2. Syed IS, Glockner JF, Feng D, et al. JACC Cardiovasc Imaging. 2010;3(2):155-164.
  3. Fontana M, Banypersad SM, Treibel TA, et al. JACC Cardiovasc Imaging. 2014;7(2):157-165.
  4. Oda S, Emoto T, Nakaura T, et al. Radiol Cardiothorac Imaging. 2019;1(1):e180003.
  5. Bandula S, White SK, Flett AS, et al. Radiology. 2013;269(2):396-403.
  6. Oda S, Nakaura T, Utsunomiya D, et al. Amyloid. 2018;25(2):137-138.
  7. Treibel TA, Bandula S, Fontana M, et al. J Cardiovasc Comput Tomogr. 2015;9(6):585-592.
  8. Chevance V, Damy T, Tacher V, et al. Eur Radiol. 2018;28(2):816-823.