監修
関島 良樹 先生
(信州大学医学部 神経内科、リウマチ・膠原病内科 教授)

siRNA製剤

siRNA※1製剤は、RNAi※2と呼ばれる遺伝子サイレンシングを利用して標的mRNAを分解することで疾患の原因となるタンパク質の産生を抑制します。

日本では、 2019年6月に点滴静注製剤であるパチシランが、2022年9月に皮下注製剤であるブトリシランが、いずれも「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー」を適応症として承認されました。

パチシランは、TTR mRNAを選択的に分解し、変異型および野生型TTRの産生を特異的に阻害する、世界で初めてのsiRNA製剤です。パチシランは3週に1回投与することにより、プラセボに比べて、ニューロパチーやQOLスコア、栄養状態などを改善すること、また、投与開始後早期に血清中TTR濃度を減少させ、試験期間を通してその減少を維持することなどが、遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(日本人含む)1において示されています。 パチシランの主な副作用としては、Infusion reactionや下痢、末梢性浮腫、無力症などが報告されています。
パチシランの主な副作用としては、Infusion reactionや下痢、末梢性浮腫、無力症などが報告されています。

ブトリシランは、第二世代のsiRNA製剤であり、パチシランと同様、TTR mRNAを選択的に分解し、変異型および野生型TTRの産生を特異的に阻害します。また、ブトリシランは、ESC(Enhanced Stabilization Chemistry)-GalNAc(N-アセチルガラクトサミン)コンジュゲート技術を基盤としたGalNAc結合siRNA製剤です。siRNAにGalNAcを3分子結合させることで、肝細胞への迅速かつ特異的な送達を可能にし、ESCデザインにより、代謝安定性が向上し、肝臓での滞留時間が延長されました。ブトリシランは3ヵ月に1回投与することにより、プラセボ群と比較して、神経障害の指標であるmNIS+7(補正神経障害スコア+7)やQOLの指標であるNorfolk QOL-DNスコアなどを改善することが、遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(日本人含む)2において示されています。
ブトリシランの主な副作用としては、注射部位反応、ビタミンA減少およびドライアイが報告されています。

※1 small interfering RNA、※2 RNA interference

パチシランに関する詳細情報はこちらの製品サイトをご覧ください

ブトリシランに関する詳細情報はこちらの製品サイトをご覧ください

引用文献

  1. Adams D, Gonzalez-Duarte A, O'Riordan WD, et al. N Engl J Med. 2018;379:11-21.
  2. Adams D, Tournev IL, Taylor MS, et al. Amyloid. 2022(epub).