監修
小池 春樹 先生

(名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学 准教授)

遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)の予後

生命予後

遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)は進行性で予後不良の疾患です。

熊本大学病院における主に集積地出身のV30M型遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)患者80例を対象とした検討では、10年生存率は、肝移植を受けた患者で100%であったのに対して、肝移植を受けなかった患者で56.1%であったことが報告されています1。肝移植を受けなかった患者は、その代わりに薬物療法を含む標準的治療を受けており、日本人患者における当時の自然歴を示しているといえます。

遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)の平均生存年数:肝移植例/非肝移植例
Yamashita T, et al. Long-term survival after liver transplantation in patients with familial amyloid polyneuropathy. Neurology. 2012;78(9):637-643.
https://n.neurology.org/content/78/9/637.long
対象 1990年1月から2010年12月までに熊本大学病院を受診したV30M型遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)患者80例 (肝移植例37例、非肝移植例43例、平均年齢:肝移植例34.2歳、非肝移植例46.4歳) 方法 部分生体肝移植を施行した患者と肝移植を施行しなかった患者の生命予後をKaplan-Meier法により検討した(log-rank検定)

非集積地における生存年数および死因

日本の非集積地における、V30M型の遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)患者50例(診断時年齢:51歳以上)を対象に、発症から死亡までの期間および死因について調査したところ、死亡した患者21例における発症から死亡までの期間平均値は7.3年であり、死因に占める割合は心不全が38%で最も高く、次いで突然死33%であったことが報告されています2

非集積地における生存年数および死因2

    n=21
全体 死亡時年齢(歳) 70.0±6.0
発症から死亡までの期間(年) 7.3±2.9
死因 心不全 8(38%)
突然死 7(33%)
悪液質および二次感染 4(19%)
その他2(10%)

平均±SDまたは例数(%),

1例は麻痺性イレウス、もう1例は肺がんによる死亡

Reproduced from Natural history of transthyretin Val30Met familial amyloid polyneuropathy: analysis of late-onset cases from non-endemic areas, Koike H, et al., 83(2), 152-158, 2012 with permission from BMJ Publishing Group Ltd. 対象 日本の非集積地における、診断時の年齢が51歳以上のV30M型の遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)患者50例 方法 患者との面談、診察、家族との面談および診療記録より、各患者における死亡時年齢および各臨床的指標が最初に発現した年齢を後ろ向きに評価した。また、死亡した患者21例における発症から死亡までの期間および死因についても調査した。

早期診断・早期治療の重要性

遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)は進行性で予後不良の疾患です。また、本疾患は、全身性のアミロイドーシスによる多様な臨床症状がみられることから、他の疾患と間違えられて、遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)と診断されていないケースもあります3。このため、確定診断までに時間を要し、発症後も長期間にわたって、適切な治療がなされていないことが珍しくありません。しかし、早期に診断され、適切な治療により疾患進行を遅らせることができれば、患者の生活の質の向上のみならず、生命予後の改善も期待できます。

したがって、本疾患においては、早期の適切な診断と治療が非常に重要になります。

診断時期の違いによる臨床経過例

引用文献

  1. Yamashita T, Ando Y, Okamoto S, et al. Neurology. 2012;78:637-643.
  2. Koike H, Tanaka F, Hashimoto R, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2012;83:152-158.
  3. 安東 由喜雄 監修. 最新 アミロイドーシスのすべて. 第1版. 東京: 医歯薬出版; 2017:32-51.