監修
小池 春樹 先生

(佐賀大学医学部 内科学講座 脳神経内科 教授)

遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)の初発症状

遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)の初発症状としては、アミロイド沈着が最も進行した臓器、つまりアミロイド沈着に最も脆弱な臓器の症状として以下のものが認められます1

  • ニューロパチーによる手足のしびれ感
  • 自律神経障害による起立性低血圧や排尿障害
  • 消化管へのアミロイド沈着による嘔吐や下痢などの消化器症状
  • 心アミロイドーシスによる不整脈や心不全
  • 手根管症候群

など

ただし、これらの初発症状は、病型によって大きく異なることが報告されています2,3

遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)の病型別にみた初発症状の違い①
Translated by permission from Springer Nature: Springer Nature, J Neurol. Genetic and clinical characteristics of hereditary transthyretin amyloidosis in endemic and non-endemic areas: experience from a single-referral center in Japan., Yamashita T, et al., ©2018 対象 2012年4月1日~2017年3月31日に遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)と診断され、熊本大学病院アミロイドーシス診療センターで治療を受けた104例(若年発症V30M型:11例、高齢発症V30M型:53例、非V30M型:40例) 方法 3つの病型(若年発症V30M型、高齢発症V30M型、非V30M型)別に、それぞれの初発症状を検討した。
遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)の病型別にみた初発症状の違い②
Translated by permission from Springer Nature: Springer Nature, J Neurol. Electrophysiological features of late-onset transthyretin Met30 familial amyloid polyneuropathy unrelated to endemic foci., Koike H, et al., ©2008 対象 遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)と診断された患者(若年発症V30M型:21例、高齢発症V30M型:44例) 方法 2つの病型(若年発症V30M型、高齢発症V30M型)別に、それぞれの初発症状を検討した。

若年発症V30M型(集積地に多い)

初発症状として最も多いのは、下肢遠位部の異常感覚で、温痛覚が優位に障害される解離性感覚障害を示します。次いで多いのが自律神経症状(高度の下痢・便秘、嘔吐発作などの消化器症状)です4,5

高齢発症V30M型(非集積地に多い)

下肢遠位部の異常感覚で発症する緩徐進行性のポリニューロパチーが主症状となりますが、解離性感覚障害は目立たず、全感覚障害を認めることが多いのが特徴です4,5。また、心アミロイドーシスの頻度が高く、心筋肥厚や心肥大をきたし心不全を契機に診断される場合もまれではありません4,5

非V30M型

ポリニューロパチーの発現頻度は、V30M型に比べて低くなります2。また、非V30M型の中には心筋症を主徴とする変異型もあり、心不全や不整脈などの心症状が初発症状としてあらわれることがあります2,5

引用文献

  1. 安東 由喜雄 監修. 最新 アミロイドーシスのすべて. 第1版. 東京: 医歯薬出版; 2017:32-51.
  2. Yamashita T, Ueda M, Misumi Y, et al. J Neurol. 2018;265:134-140.
  3. Koike H, Kawagashira Y, Iijima M, et al. J Neurol. 2008;255:1526-1533.
  4. Koike H, Misu K, Ikeda S, et al. Arch Neurol. 2002;59:1771-1776.
  5. 関島 良樹: 臨床神経. 2014;54:953-956.