- 監修
- 安東 由喜雄 先生
(医療法人 杉村会 杉村病院 総長アミロイドーシス診療・研究サポートセンター長、長崎国際大学 薬学部 アミロイドーシス病態解析学寄付研究所特任教授、熊本大学名誉教授)
遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP) 疫学
遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)に関連するTTR遺伝子変異は150種類を超えることが報告されており、世界的にも日本においてもTTRの30番目のアミノ酸のバリン(Val)がメチオニン(Met)に変異したV30M型が最も多いことが知られています1-3。
以前はV30M型のみの大家系がポルトガル、スウェーデン、日本に限局して存在すると考えられていましたが、最近の研究から、世界各国に遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)が確認されています3。
日本における遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)の病型
日本における遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)患者の約60%がV30M変異を有しているといわれています1。ただし、V30M変異を有する患者でも、若年発症(集積地に多い)と家族歴の明確ではない高齢発症(非集積地に多い)で臨床像が大きく異なります。
若年発症V30M型と高齢発症V30M型の臨床像の比較4
若年発症V30M型 | 高齢発症V30M型 | |
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発症年齢 | 20~40歳代 | 50~80歳代 |
男女比 | 約1:1 | 約5:1 |
浸透率※ | 高い(90%以上) | 比較的低い |
家族歴 | ほぼ認められる | 認められない場合も多い |
自律神経障害 | 早期から目立つ | 早期はあまり目立たない |
解離性感覚障害 | 顕著 | 目立たない |
主な心合併症 | 房室ブロック | 拘束型心筋症 |
典型的な初発症状 |
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したがって、V30M型以外の変異を有する非V30M型も合わせると、遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)は、①若年発症V30M型、②高齢発症V30M型、③非V30M型の3病型に分類することができます。
日本における遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)の分布
日本では熊本県、長野県および石川県にV30M型の集積地があり5、その多くは若年発症型です。また、高齢発症V30M型の中で家族歴が明確でない孤発例1と非V30M型の存在が日本各地で明らかにされています5。
日本における遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)の患者数
日本には、700~1,000人程度の遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)患者がいると推定されています。ただし、本疾患の症状は多様であることから、他の疾患と間違われているケースがあり、確定診断に至っていない潜在患者が多数いると考えられています。
引用文献
- Yamashita T, Ueda M, Misumi Y, et al. J Neurol. 2018;265:134-140.
- Parman Y, Adams D, Obici L, et al. Curr Opin Neurol. 2016;29:S3-S13.
- Schmidt HH, Waddington-Cruz M, Botteman MF, et al. Muscle Nerve. 2018;57:829-837.
- 関島良樹 臨床神経. 2014;54:953-956. を参考
- Araki S, Ando Y. Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci. 2010;86:694-706.