監修
安東 由喜雄 先生

(長崎国際大学 学長、長崎国際大学薬学部アミロイドーシス病態解析学分野 教授、熊本大学 名誉教授)

遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP) 厚生労働省「指定難病」認定基準(家族性アミロイドニューロパチー)

遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)は、指定難病に指定されている「全身性アミロイドーシス(告示番号28番)」に含まれ、「家族性アミロイドニューロパチー」として難病医療費助成制度の対象疾患とされています。「難病法」による医療費助成の対象となるのは、原則として「指定難病」と診断され、「重症度分類等」に照らして病状の程度が一定程度以上の場合です。「家族性アミロイドニューロパチー」は、重症度分類における2度以上を対象とします。

※ 難病法:難病の患者に対する医療等に関する法律(平成26年法律第50号)

診断のカテゴリー

確実:以下の2つ以上とアミロイド前駆蛋白の遺伝子異常を認める場合
ほぼ確実:家族歴があり、以下の1つ以上を認める場合
  • 感覚障害
    左右対称性に、下肢又は上肢末端から始まる。温度覚、痛覚が早く、かつ強く侵され(解離性感覚障害)、振動覚、位置覚は進行期に侵される。手根管症候群で発症する場合もある。
  • 運動障害
    感覚障害より2、3年遅れて出現し、筋萎縮、筋力低下が下肢又は上肢末端から始まる。
  • 自律神経系の障害
    1. 陰萎(男性)
    2. 胃腸症状(激しい嘔気・嘔吐発作、ひどい便秘と下痢の交代、不定な腹痛、腹部重圧感)
    3. 起立性低血圧(立ちくらみ、失神)
    4. 膀胱障害(排尿障害、尿失禁など)
    5. 皮膚症状(皮膚栄養障害、発汗異常、難治性潰瘍)
    6. 心障害(心伝導障害による不整脈、心不全)

家族性アミロイドニューロパチーの重症度分類

1度 組織学的にアミロイド沈着が確認される又はアミロイド沈着を疑わせる検査所見があるが、アミロイド沈着による明らかな臓器機能障害を認めない。
2度 組織学的にアミロイド沈着が確認される又はアミロイド沈着を疑わせる検査所見があり、かつ、アミロイド沈着による軽度の臓器機能障害を単一臓器に認める。
3度 組織学的にアミロイド沈着が確認される又はアミロイド沈着を疑わせる検査所見があり、かつ、アミロイド沈着による複数の臓器機能障害を認める。
4度 組織学的にアミロイド沈着が確認され、かつ、アミロイド沈着による中等度以上の臓器機能障害を単一又は複数の部位に認める。
5度 組織学的にアミロイド沈着が確認され、かつ、アミロイド沈着による重度の臓器機能障害を複数の部位に認める。
注1 アミロイド沈着を確認された部位は、臓器障害を認める部位と必ずしも一致する必要はない。 注2 アミロイドーシス原因蛋白質の同定及び病型診断を行うことが望ましい。 注3 臓器障害は、神経、心臓、腎臓、消化管、呼吸器、泌尿器、眼、骨・関節、内分泌など。

各指定難病の概要や認定基準、新規申請に必要な国の指定難病の診断書(臨床調査個人票)は厚生労働省健康局難病対策課のサイトからダウンロードできます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000062437.html

難病情報センターホームページ(2019年12月)から引用