監修
関島 良樹 先生
(信州大学医学部内科学第三教室 教授)

肝移植

TTRは95%以上が肝臓で産生されることから、変異型TTRの産生臓器である肝臓を外科的に入れ替える肝移植が、唯一の長期的エビデンスを有する疾患修飾療法として確立しています1

本疾患に対する肝移植の適応として、mBMI[血清アルブミン値(g/L)×BMI(kg/m2)]が600以上、発症後5年以下、TTR遺伝子型がV30M型、主な症状が末梢神経障害で自律神経障害が高度でない、60歳未満、血清アルブミン値が3.5mg/dL以上、心拡大なし、腎機能障害なし、自立歩行可能なことがレシピエントの条件となっています2

日本肝移植研究会による「肝移植症例登録報告」によると、1964年から2016年までの日本における肝移植の総数は8,825、そのうち、レシピエントの原疾患が遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)で初回死体肝移植が施行されたのは304中3、初回生体肝移植が施行されたのは8,233中89であり、初回生体肝移植におけるレシピエントの累積生存率は、1年96.6%、3年90.7%、5年86.8%、10年82.9%、15年69.3%、20年50.5%であったことが示されています3

遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)患者の初回生体肝移植後の累積生存率 遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)患者の初回生体肝移植後の累積生存率
対象 1964年から2016年までに初回生体肝移植が施行された遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)患者89例 方法 対象患者の累積生存率をKaplan-Meier法により算出した。

アミロイドーシス最新診療ガイドライン(2017)では、「遺伝性ATTRアミロイドーシスの治療に肝移植は推奨されるか?」というクリニカルクエスチョンに対して、V30M型に対しては推奨度B(科学的根拠があり、行うよう勧められる)、非V30M型に対しては推奨度C1(科学的根拠はないが、行うよう勧められる)と記載されています2。しかし、死体肝移植のドナー数は極めて少ないことに加え、遺伝性の疾患であるため、親族に生体肝移植のドナーを見つけることは困難であるのが現状です。また、肝移植は本疾患の進行を阻止する治療であるため、術前の症状の多くは改善されず残存します。さらに、網膜色素上皮細胞・脈絡叢など肝臓以外から産生される変異型TTRによって硝子体混濁や緑内障などの眼合併症4や脳アミロイドアンギオパチーなどの中枢神経合併症5が発症することが課題とされています。

引用文献

  1. 安東 由喜雄 監修. 最新 アミロイドーシスのすべて. 第1版. 東京: 医歯薬出版; 2017:32-51.
  2. 安東 由喜雄 監修. 最新 アミロイドーシスのすべて. 第1版. 東京: 医歯薬出版; 2017:67-69.
  3. 日本肝移植研究会. 移植. 2017;52:134-147.
  4. Buxbaum JN, Brannagan T 3rd, Buades-Reinés J, et al. Amyloid. 2019;26:10-14.
  5. Sekijima Y, Yazaki M, Oguchi K, et al. Neurology. 2016;87:773-781.