- 監修
- 北岡 裕章 先生
(高知大学医学部老年病・循環器内科学 教授)
心アミロイドーシスの治療 心不全・不整脈に対する治療
心不全ステージ分類に基づく心アミロイドーシス治療の全体像と心アミロイドーシスにおける薬物治療の推奨とエビデンスレベルは、以下の通りです。
心アミロイドーシスにおける薬物治療の推奨とエビデンスレベル
推奨 クラス |
エビデンス レベル |
Minds 推奨 グレード |
Minds エビデンス 分類 |
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体液貯留に対する利尿薬の投与 | I | C | C1 | V | |
急性増悪時の肺うっ血に対する硝酸薬、カルペリチドの静注 | IIa | C | C1 | V | |
心拍出量低下を伴うポンプ失調に対するカテコラミン、PDE 阻害薬の静注 | IIa | C | C1 | V | |
認容性のあるなかでのACE 阻害薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬の投与 | IIb | C | C1 | V | |
心房細動に対する抗凝固療法 | I | C | B | V | |
心機能低下を伴う心房頻拍に対する抗凝固療法 | IIa | C | C1 | V | |
頻脈性心房細動に対するβ遮断薬の投与 | II(個別に判断) | C | C1 | V | |
収縮能の保たれたATTR アミロイドーシスに伴う頻脈性心房細動に対する非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の投与 | IIb(個別に判断) | C | C2 | V | |
収縮能の低下したATTR アミロイドーシスに伴う頻脈性心房細動に対する非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の投与 | III | C | C2 | V | |
AL アミロイドーシスに伴う頻脈性心房細動に対する非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の投与 | III | C | C2 | V | |
頻脈性心房細動に対するジギタリスの投与 | III | C | C2 | V |
心不全に対する一般的治療
心アミロイドーシスによる心不全では、左室機能不全に対する一般的薬物治療とアミロイドーシスという原病に対する治療の2つの可能性を念頭におきながら、心不全徴候への対処を必要に応じて展開することが基本方針とされています。
一般的に左室収縮機能障害では、神経体液性因子と呼ばれる交感神経系とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を抑制し、心不全の予後を改善させる薬物治療が確立しています1。しかしながら、心アミロイドーシスによる心不全の多くでみられる左室拡張機能障害では、いまだに予後を改善させる治療が見出されていません1。さらには、心アミロイドーシスでは拘束性障害に基づき1回拍出量や血圧の低下をきたしやすくなります。アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬といった神経体液性因子調整薬が、拡張機能障害例の予後改善に寄与するかが判然としないばかりでなく、低心拍出や腎機能障害といった副次作用を生みかねません2。よって、患者個別に適応を判断する必要があります。
不整脈に対する治療
心アミロイドーシスでは、心房細動や心房粗動、心房頻拍や刺激伝導系障害(房室ブロック、脚ブロック、心室内伝導遅延)など多様な上室性不整脈および心室性不整脈を単独あるいは重複して発症します。これまで心アミロイドーシスと不整脈に関する大規模な疫学調査や介入研究が施行されていません。そのため、心アミロイドーシスに至った原疾患や全身状態、病期の進行度あるいは原疾患に対する治療効果の有無や予後などから、個別に薬物治療を判断するべきとされています。
引用文献
- 日本循環器学会/日本心不全学会. 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_h.pdf(2021年3月閲覧) - Grogan M, Dispenzieri A. Heart Fail Rev. 2015;20(2):155-162.