- 監修
- 北岡 裕章 先生
(高知大学医学部老年病・循環器内科学 教授)
心アミロイドーシスの診断 遺伝学的検査・遺伝カウンセリング
心アミロイドーシス診療における遺伝学的検査は、ATTRvアミロイドーシスおよびATTRwtアミロイドーシスの確定診断において必須です。また、ATTRvアミロイドーシスの親族の発症前診断の目的で検査を実施する場合があります。遺伝学的検査は、「すでに発症している患者の診断を目的として行われる遺伝学的検査」と「発症前診断」を区別する必要があります。
有症状者に対する遺伝学的検査と発症前診断の違い
検査の目的 | 担当する医療従事者 | 保険適用の有無 | |
---|---|---|---|
有症状者に対する遺伝学的検査 | ATTRアミロイドーシス(遺伝性および野生型)の確定診断 | 担当診療科の主治医 (循環器内科医など) |
保険収載あり 遺伝カウンセリング加算あり |
発症前診断 | 遺伝性ATTRアミロイドーシスの将来発症予測 |
|
保険収載なし (自由診療) |
有症状者に対する遺伝学的検査
心アミロイドーシス患者の診断を確定することは治療方針の決定に必須であり、ATTRアミロイドーシスが疑われる患者に対しては遺伝学的検査を積極的に行うべきです。しかし、TTR遺伝子に変異が認められた場合親族への影響が大きいため、検査にあたっては十分な配慮が必要になります。具体的には、検査の意味、疾患の遺伝形式・経過・予後・治療法などに関する十分な情報を提供し、検査後の見通しを示す必要があります。また、必要に応じて専門家による遺伝カウンセリングや意思決定のための支援を受けられるように配慮します。
現在わが国では、ATTRvアミロイドーシスが疑われる患者に対する遺伝学的検査(TTR遺伝子検査)が保険収載(3,880点)されています。その結果について患者またはその家族に対し遺伝カウンセリングを行った場合には、遺伝カウンセリング加算(1,000点)が算定されます。
遺伝カウンセリングと発症前診断
ATTRvアミロイドーシスは早期の診断により疾患修飾療法が可能な疾患であり、発症リスクがある親族への情報提供は親族の健康管理においてきわめて重要です1。ATTRvアミロイドーシスは成人発症の疾患であるため、発症前診断にあたっては、①クライエントが成人である、②クライエント本人の自発的な意志である、③疾患の遺伝形式・遺伝の確率・経過・予後・治療法、検査の意味、検査後の見通しについて十分理解していることを確認する必要があります。
発症前診断でTTR遺伝子変異が確認され未発症保因者であることが明らかになった場合は、遺伝カウンセリング外来や当該診療科(循環器内科、脳神経内科など)で、定期的な心理的支援および発症の有無のスクリーニングを含めた診療を行う必要があります2。なお、わが国では発症前診断は保険診療の対象となっておらず、自由診療の扱いであることに注意が必要です。
引用文献
- Sekijima Y. Hereditary Transthyretin Amyloidosis. In: Adam MP, Ardinger HH, Pagon RA, et al. editors. GeneReviews. University of Washington, Updated 2018 Dec 20.
- Conceição I, Damy T, Romero M, et al. Amyloid. 2019;26(1):3-9.