- 監修
- 小池 春樹 先生
(佐賀大学医学部 内科学講座 脳神経内科 教授)
遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)の予後
生命予後
遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)は進行性で予後不良の疾患です。
熊本大学病院における主に集積地出身のV30M型遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)患者80例を対象とした検討では、10年生存率は、肝移植を受けた患者で100%であったのに対して、肝移植を受けなかった患者で56.1%であったことが報告されています1。肝移植を受けなかった患者は、その代わりに薬物療法を含む標準的治療を受けており、日本人患者における当時の自然歴を示しているといえます。
非集積地における生存年数および死因
日本の非集積地における、V30M型の遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)患者50例(診断時年齢:51歳以上)を対象に、発症から死亡までの期間および死因について調査したところ、死亡した患者21例における発症から死亡までの期間平均値は7.3年であり、死因に占める割合は心不全が38%で最も高く、次いで突然死33%であったことが報告されています2
非集積地における生存年数および死因2
n=21 | ||
---|---|---|
全体 | 死亡時年齢(歳) | 70.0±6.0 |
発症から死亡までの期間(年) | 7.3±2.9 | |
死因 | 心不全 | 8(38%) |
突然死 | 7(33%) | |
悪液質および二次感染 | 4(19%) | |
その他※ | 2(10%) |
平均±SDまたは例数(%),
※
1例は麻痺性イレウス、もう1例は肺がんによる死亡
早期診断・早期治療の重要性
遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)は進行性で予後不良の疾患です。また、本疾患は、全身性のアミロイドーシスによる多様な臨床症状がみられることから、他の疾患と間違えられて、遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)と診断されていないケースもあります3。このため、確定診断までに時間を要し、発症後も長期間にわたって、適切な治療がなされていないことが珍しくありません。しかし、早期に診断され、適切な治療により疾患進行を遅らせることができれば、患者の生活の質の向上のみならず、生命予後の改善も期待できます。
したがって、本疾患においては、早期の適切な診断と治療が非常に重要になります。
引用文献
- Yamashita T, Ando Y, Okamoto S, et al. Neurology. 2012;78:637-643.
- Koike H, Tanaka F, Hashimoto R, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2012;83:152-158.
- 安東 由喜雄 監修. 最新 アミロイドーシスのすべて. 第1版. 東京: 医歯薬出版; 2017:32-51.