監修
関島 良樹 先生
(信州大学医学部 神経内科、リウマチ・膠原病内科 教授)

身体機能 握力検査

上肢の運動機能を評価します。

概要

  • 立位で握力計を持ち、腕を体幹に平行に保ったまま測定します。握力の単位はkgで表されます。

主な所見

  • 握力の低下

評価頻度(目安)

  • ベースライン時、その後は3ヵ月に1回

評価上のポイント

  • 遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP)患者を対象にPNDスコア別に患者の右手の握力を検討したところ、握力の値が低い(握力が弱い)ほどPNDスコアが高かったことが報告されていま1

参考情報

  • 健康女性32名とNSRP(nonspecific regional pain)を有する女性10例を対象とした検討では、6kg未満の握力の変化は偶然に生じた可能性があり、真の変化を95%の確率で検出するためには、6kg以上の変化が必要であることが示唆されていま2

  • スポーツ庁の「令和元年度 体力・運動能力調査報告書」における55~79歳の握力検査の結果は以下の通りで3

握力(kg)3

年齢 男性 女性
n 平均値 標準偏差 n 平均値 標準偏差
55~59歳 1,087 44.68 6.25 1,103 27.32 4.21
60~64歳 1,125 43.11 6.11 1,206 26.53 4.11
65~69歳 940 40.38 6.04 940 25.41 3.83
70~74歳 940 38.00 5.52 940 24.03 3.88
75~79歳 933 35.90 5.53 940 23.06 3.91
調査実施期間
令和元年5月~10月

臨床フレイル・スケール(Clinical Frail Scale:CFS)4,5

1
壮健(very fit)
頑強で活動的であり、精力的で意欲的。一般に定期的に運動し、同世代の中では最も健康状態がよい。
2
健常(well)
疾患の活動的な症状を有してはいないが、上記のカテゴリ1に比べれば頑強ではない。運動の習慣を有している場合もあり、機会があればかなり活発に運動する場合も少なくない。
3
健康管理しつつ元気な状態を維持(managing well)
医学的な問題はよく管理されているが、運動は習慣的なウォーキング程度で、それ以上の運動はあまりしない。
4
脆弱(vulnerable)
日常生活においては支援を要しないが、症状によって活動が制限されることがある。「動作が遅くなった」とか「日中に疲れやすい」などと訴えることが多い。
5
軽度のフレイル(mildly frail)
より明らかに動作が緩慢になり、IADLのうち難易度の高い動作(金銭管理、交通機関の利用、負担の重い家事、服薬管理)に支援を要する。典型的には、次第に買い物、単独での外出、食事の準備や家事にも支援を要するようになる。
6
中等度のフレイル(moderately frail)
屋外での活動全般および家事において支援を要する。階段の昇降が困難になり、入浴に介助を要する。更衣に関して見守り程度の支援を要する場合もある。
7
重度のフレイル(severely frail)
身体面であれ認知面であれ、生活全般において介助を要する。しかし、身体状態は安定していて、(半年以内の)死亡リスクは高くない。
8
非常に重度のフレイル(very severely frail)
全介助であり、死期が近づいている。典型的には、軽度の疾患でも回復しない。
9
疾患の終末期(terminally ill)
死期が近づいている。生命予後は半年未満だが、それ以外では明らかにフレイルとはいえない。

引用文献

  1. Adams D, Coelho T, Obici L, et al. Neurology. 2015;85(8):675-682.
  2. Nitschke JE, McMeeken JM, Burry HC, et al. J Hand Ther. 1999;12(1):25-30.
  3. スポーツ庁. 令和元年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について. https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1421920_00001.htm(2021年12月閲覧)
  4. Rockwood K, Song X, MacKnight C, et al. CMAJ. 2005;173(5):489-495.
  5. Reprinted from J Am Med Dir Assoc, 14(6), Morley JE, Vellas B, van Kan GA, et al., Frailty Consensus: A Call to Action, 392–397©2013, with permission from Elsevier.