- 監修
- 関島 良樹 先生
(信州大学医学部 神経内科、リウマチ・膠原病内科 教授)
心臓 MRI検査:T1 mapping(native T1、ECV)
- native T1
- 心筋全体(細胞内外)のダメージを定量的に評価します。
- ECV
- 細胞外容積の広がり(線維化や間質拡大)を定量的に評価します。
概要
心筋のT1値(T1緩和時間)を定量的に測定する撮影法であり、ガドリニウム造影剤を使用しないnative T1と、造影剤を使用して評価するECV(extracellular volume fraction:細胞外容積分画)の2つの指標があります1。
遅延造影MRIよりも病変の検出感度が高いことが特徴です2,3。
主な所見
native T1、ECVともに異常高値4
ECV≧35~40%(基準値:23~28%)1
評価上のポイント
ECVは心アミロイドーシスの重症度や予後とも相関を示します5。
ATTRアミロイドーシス患者227例(遺伝性:81例、野生型:134例、TTR変異保因者:12例)を対象に、native T1およびECV nativeと心機能や6分間歩行試験、バイオマーカー(NT-proBNP、トロポニンT)といった各パラメータとの相関を検討したところ、ECVはnative T1に比べて各パラメータとの相関が強かったことが報告されています6。
ATTRアミロイドーシス患者263例(遺伝性:95例、野生型:168例)を対象とした検討において、ECVが3%上昇することで死亡のハザード比が1.164になることが報告されています7。
死亡リスクとの有意な相関(海外データ)7
HR(95%CI) | p値 | |
---|---|---|
年齢 | 1.059(1.016-1.013) | <0.01 |
左室心筋重量、10g増加ごと | 0.941(0.853-1.039) | 0.229 |
左室駆出率、3%上昇ごと | 0.986(0.916-1.060) | 0.699 |
NT-proBNP、100pmol/L増加ごと | 1.016(1.005-1.027) | <0.01 |
E/e’、1-U増加ごと | 0.996(0.949-1.045) | 0.873 |
ECV、3%上昇ごと | 1.164(1.066-1.271) | <0.01 |
- 対象・方法
- 99mTc-DPDシンチグラフィでグレード2~3のATTR心アミロイドーシス患者263例(遺伝性:95例、野生型:168例)、グレード1でATTR心アミロイドーシスが疑われる17例(遺伝性:8例、野生型:9例)、グレード0のTTR遺伝子変異を有する無症候性患者12例を対象に、死亡リスクに関与する因子を多変量解析した。
参考情報
-
native T1は、装置磁場強度(1.5Tや3.0T)や撮影シーケンスなどの影響を受けやすいため、基準値は装置ごと、撮影シーケンスごとに設定する必要があります1。
引用文献
- 日本循環器学会. 2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2020_Kitaoka.pdf(2021年12月閲覧)
- Banypersad SM, Sado DM, Flett AS, et al. Circ Cardiovasc Imaging. 2013;6(1):34-39.
- Oda S, Utsunomiya D, Morita K, et al. Eur Radiol. 2017;27(11):4631-4638.
- Fontana M, Banypersad SM, Treibel TA, et al. JACC Cardiovasc Imaging. 2014;7(2):157-165.
- Reprinted from JACC Cardiovasc Imaging., 12(5), Martinez-Naharro A, Kotecha T, Norrington K, et al., Native T1 and Extracellular Volume in Transthyretin Amyloidosis, 810-819, ©2019, with permission from Elsevier.
- Martinez-Naharro A, Kotecha T, Norrington K, et al. JACC Cardiovasc Imaging. 2019;12(5):810-819.
- Reprinted from J Am Coll Cardiol., 70(4), Martinez-Naharro A, Treibel TA, Abdel-Gadir A, et al., Magnetic Resonance in Transthyretin Cardiac Amyloidosis, 466-477, ©2017, with permission from Elsevier.