監修
関島 良樹 先生
(信州大学医学部 神経内科、リウマチ・膠原病内科 教授)

心臓 心エコー検査:Mモード心エコー法、断層心エコー法

心臓の形態機能を評価します。

主な所見1

Mモード心エコー法

  • 拡張末期左室径の減少

  • 収縮末期左室径の増加

  • 心室中隔、左室後壁の低収縮

  • 収縮期左室壁肥厚の減少

  • 正常ないしは狭小化した左室腔左房径の拡大

  • 中隔/後壁比<1.3

  • 保たれた左室駆出率 (>60%)

  • 心囊液貯留

  • 高血圧や弁膜症がない対称性左室肥大

  • 僧帽弁E-Fスロープの減少

断層心エコー法

  • 乳頭筋の肥厚

  • 弁の肥厚

  • 右室壁肥厚の明瞭化

  • 心房中隔肥厚

評価頻度(目安)

  • ベースライン時、その後は12ヵ月に1回(ただし、心アミロイドーシスがある場合は、6ヵ月に1回評価することが好ましい)

評価上のポイント

  • 「2021年改訂版 循環器超音波検査の適応と判読ガイドライン」では、ATTRアミロイドーシスの診断後、症状が安定している場合は6~12ヵ月ごとの心エコー法によるフォローアップを推奨していま2

経胸壁心エコー法(TTE)による心アミロイドーシス・フォローアップの推奨とエビデンスレベ2

  推奨
クラス
エビデンス
レベル
ATTRアミロイドーシスと診断され、症状が安定している場合に6~12ヵ月ごとにTTEを行う. I C
ALアミロイドーシスと診断され、症状が安定している場合に3~6ヵ月ごとにTTEを行う. I C
心アミロイドーシスと診断されている患者で症状に変化があった場合に再評価TTEを行う. I C
ATTRvアミロイドーシスの家族歴がある場合のスクリーニング検査として、TTEを考慮してもよい. IIb C
ATTR
トランスサイレチン型アミロイドーシス
AL
免疫グロブリン遊離軽鎖型
ATTRv
遺伝性ATTRアミロイドーシス

日本循環器学会. 2021年改訂版 循環器超音波検査の適応と判読ガイドライン
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Ohte.pdf(2021年12月閲覧)

  • 臨床的に心不全発症は左室壁厚の程度、他のエコー指標の異常と関連しており、生存率は壁厚増加、左室内径短縮率低下と反比例し、心エコー法は全身性アミロイドーシスの予後を判定できるとされていま1

  • 心エコー検査を受けた心アミロイドーシス患者172例(ALアミロイドーシス:80例、遺伝性ATTRアミロイドーシス(FAP):36例、野生型ATTRアミロイドーシス:56例)を対象とした研究で以下のことが報告されていま3

    • 臨床的特徴と左室壁厚について収縮機能との関係を検討したところ、「遺伝性ATTR」と「左室壁」がグローバル長軸方向ストレインに関連する因子として抽出され、また、左室壁が1mm増加することでグローバル長軸方向ストレインが悪化する。
    • グローバル長軸方向ストレインが1%上昇することで、死亡のハザード比が1.1になる。

参考情報

  • 日本人の健康成人(20~79歳、700例)を対象に、心エコー計測で得られた各パラメータの基準値は以下の通りでし4

日本人健康成人における心エコー計測での基準値(多施設共同研究JAMP study)4

  男性 女性
左室壁厚 心室中隔 (cm) 0.9±0.1 0.8±0.1
後壁 (cm) 0.9±0.1 0.8±0.1
左室径 拡張末期径 (cm) 4.8±0.4 4.4±0.3
収縮末期径 (cm) 3.0±0.4 2.8±0.3
左室容積 拡張末期容積 (mL) 93±20 74±17
収縮末期容積 (mL) 33±20 25±7
左室駆出率 (%) 64±5 66±5
左室重量 (g) 133±28 105±22
左房径 左房横径 (cm) 3.6±0.5 3.5±0.5
左房縦径 (cm) 4.9±0.7 4.6±0.7
左房容積 左房最大容積 (mL) 42±14 38±12
左房最小容積 (mL) 20±9 17±7

平均値±SD

Daimon M, Watanabe H, Abe Y, et al. Circ J. 2008;72(11):1859-1866. より改変

引用文献

  1. 日本循環器学会. 2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2020_Kitaoka.pdf(2021年12月閲覧)
  2. 日本循環器学会. 2021年改訂版 循環器超音波検査の適応と判読ガイドライン https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Ohte.pdf(2021年12月閲覧)
  3. Quarta CC, Solomon SD, Uraizee I, et al. Circulation. 2014;129(18):1840-1849.
  4. Daimon M, Watanabe H, Abe Y, et al. Circ J. 2008;72(11):1859-1866. より改変